宗族には出自集団の宗族と親族集団の宗族があることが考えられます。出自集団の宗族とは、個人が出生と同時に組み込まれる、祖先を共通にする血縁集団が形成する宗族です。これを文化人類学ではリネージと言っているようです。このタイプの宗族は規模は小さいけれども結束力は強かったと思われます。
親族集団の宗族とは出自集団の構成員と、その親族によって形成されている宗族と考えるのがよいようで、文化人類学では親族をキンドレッドと言っています。この親族集団がクランだと考えることもできそうです。中国の宗族には「連宗」と言われている宗族の合流が見られますが、倭人の場合には武力の伴う強引な通婚が盛んに行なわれたようです。
この武力を伴うような強引な通婚が行われたことが、弥生時代後半の文化の特徴のひとつになっているようです。それが『古事記』『日本書記』の神話で「妻問い」「国求ぎ」の物語として語られていますが、これについては追々に述べていきます。
日本の民法は親族の範囲を配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族を親族とする規定を設けていますが、親族は限界〔枠〕を設けないと無限に拡大していきます。出自集団とその親族で構成されるタイプの宗族は規模は大きいが結束力は弱かったと考えられます。
ですから親族の範囲を拡大していくと、前回に述べた通婚圏は親族が分布している地域ということになり、親族集団の宗族の巨大なものが部族だと言うことになります。出自集団の宗族、親族集団の宗族・部族に共通することは、その始祖を神として祀ることです。始祖の祭祀が行なわれなくなることは、その宗族・部族が消滅したことを意味します。これが「氏神の祭り」の始原のようです。
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